凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 重なり合った唇の隙間から菜乃の遠慮がちな吐息がこぼれる。それすらも吸い取り味わいたいのをグッと堪え、ほんの少し吸いつきながら唇を離した。

 菜乃は照れ笑いして、今しがた触れていた唇を両手で覆う。

 素直に嬉しさを表現する姿が可愛い。好きすぎて頭がおかしくなりそうだ。

 抱き寄せると彼女の艶やかな髪から甘い香りがした。

「菜乃」

 耳元で囁くと華奢な肩がピクッと跳ねる。

「好きだよ」

 返事の代わりに、菜乃は俺の胸元に頭を擦りつけてきた。

 なんだその動きは。

 庇護欲を掻き立てられて危うく抱きしめる力が馬鹿になりそうだ。

 情欲を爆発させないよう、意識を逸らすため窓外に視線を投げる。

 雨はいつの間にか小降りになっていて、ささやかな風が街路樹を揺らしていた。

 静かにその様を眺めながら、腕のなかにいる愛おしい恋人の頭に鼻を擦りつけた。

 菜乃が身じろぎをして、俺たちは同時にクスクスと笑った。


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