凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 淫らなキスの音が静かな部屋に響く。それがまた情欲を煽り、夢中になって止められないし、もっとほしいと求めてしまう。

 無意識に虹輝さんの肩や背中に手を回し、必死にしがみついていた。

 そんな中、ガタッと鳴った大きな物音で我に返った。

 驚いて虹輝さんから離れると、テーブルの上でティーカップの液体が波打っているのが目に入る。

「悪い。脚がぶつかった」

「脚が長いから……」

 僅かな沈黙のあと、揃ってクスクスと笑い合う。

「紅茶が冷めるし、食べようか。こっちはまたあとで食べるよ」

 チュッとリップ音を立ててキスをして、何事もなかったかのように虹輝さんはテーブルと向き合った。

 さすが飛行機を飛ばしているだけあって鋼の心臓だ。私はキスの余韻で鼓動が鳴りやまないというのに。

 胸に手を置いて呼吸を整えている私を、彼は楽しそうに眺めていた。

 ケーキを食べたあとは趣味の延長である仕事の話題に花を咲かせた。

 フライトでの出来事を聞かせてもらえるのは、彼女の特権だなと幸せな気持ちになる。そして私たちは苦楽を分かち合える関係なのだと気づいた瞬間でもあった。
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