凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「どうかしましたか?」

 尋ねながら、なにかしでかしたのかと気が気でない。

「いや、なんでもない」

 虹輝さんはついと顔を逸らして立ち上がる。

「すぐに出るから、適当にくつろいでいて。冷蔵庫にビールとチューハイ、ワインセラーから好きなもの出してもいいから」

 とんだ酒豪だと思われている。その通りなのでうなずき、リビングから出て行くうしろ姿を見送った。

 風呂上がりに一杯やりたいところだけれど、虹輝さんと乾杯してからの方がいいよね。

 冷蔵庫から冷えた麦茶をもらって火照りを冷まし、綺麗に片付いているキッチンをぼんやり眺める。

 調味料もだけど、調理器具も必要最低限しか揃えられていなかった。食器も少なく、お箸にいたっては一膳しかなく割り箸を使用した。

 私が入社してから虹輝さんの浮いた噂は耳にしていないし、彼以外の気配がまったく感じられない部屋を見る限り、親しくしていた女性はいなかったのだろう。

 モテるのにどうして? 私のように問題を抱えていそうには見えないし。

 思いあぐねていたら虹輝さんが戻ってきて慌ててグラスをシンクに置いた。

 十数分間ここでぼけっと突っ立っていたのを不審がられてしまう。

 虹輝さんはまだ少し濡れている髪で私をチラッと見て、またすぐに顔を前に戻す。

 さっきからなんなのだろう。
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