凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 虹輝さんが操縦桿を握るボーイング787、NAL925便、羽田空港発那覇空港行きが間もなく飛び立とうとしている。

 すらりとしたカッコいいフォルムを眺め、心の中でもう一度「行ってらっしゃい」とつぶやく。

 飛行機がゆっくりと動き出す。滑走路を真っ直ぐに進み、やがて機首が上を向き滑らかな動きで空へ飛び立つ。

 いつまでもよそ見はしていられない。離陸を見守っていた同僚と顔を合わせてうなずきあい、気を引き締めて業務にあたった。

 日常が一変したのはそれからすぐのことだった。

 耳につけている無線通信機器からは常に膨大な情報が流れ込んでくる。自分が担当していない内容でも把握しておく必要があり、グランドスタッフは一度にたくさんのことをこなしているのだ。

 いつものように無線機から音声が流れ耳を傾けていたら、突然告げられた内容に息ができなくなり、苦しくなって近くの壁に手をついた。

 ……NAL925便が飛行できなくなり、羽田空港に引き返す?

 聞き間違いじゃないかと辺りを見回すと数人のスタッフと目が合った。皆顔を強張らせている。
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