凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「どういう状況なんでしょうか?」

「バードストライクにより、左エンジンが破損したらしい」

 ひゅっと息を呑む私から目を逸らし、紺野さんは空を仰いだ。

「バードストライクなんて日常的に起こっているのに」

 文字通り、鳥が航空機と衝突する事故をバードストライクという。

「海に面した空港では多く起こり、日本国内では羽田が一番多いけど、事故に繋がるようなものはほとんどないんですよね」

「さすが新川さん、よく知っているね」

 紺野さんは上空に視線を投げたまま相槌を打つ。

「バードストライクに遭遇した飛行機に、損傷が発生する確率は約二パーセントとも言われている」

「二パーセント……」

 最近は確率についての知識を得てばかりだ。

「対策はしているし、バードストライクが起きてもほとんどは問題なく目的地へ到着している」

「それなのにどうして」

「運が悪かったとしか言いようがない」

 そんな……。どうして虹輝さんばかり不運に合うの? 私の妊娠も、今回の事故も、神様が意地悪しているとしか思えない。
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