凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「どうしたんでしょうか」

「もしかしてだけど、このまま着陸するのかもしれない」

「えっ!?」

 紺野さんは口元に手をやってなにやら考えている。

「まだ炎が出ているのであれば、このまま旋回を続けているとリスクが高くなる。エンジンが片方しか機能していないと高度を維持できなくなるし、周辺への影響も出る。着陸できる重さに達したと、椎名さんが判断したのかもしれない」

「やむを得ず、ということですか?」

「そうだね」

 虹輝さんが判断したのなら間違いないのだろう。エンジンがひとつ故障しても、飛行機は安全に飛ばせられる。

 それはそのように設計されているのもあるが、それ以外にも、パイロットはエンジンがなくなった飛行機を操縦する方法を、何時間も徹底的にトレーニングしているからだ。

 虹輝さんは時間が許す限り訓練に励んでいたし、絶対に大丈夫だろうという安心感がある。

 管制官からの指示が降りたのか、ボーイング787が着陸態勢に入った。周りのざわめきが一層大きくなる。

「新川さん、こんなときでも落ち着いているんだね」

 隣で紺野さんが驚いた顔をしているので、「へ?」と場にそぐわない間抜けな声がこぼれる。
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