凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「え? お父さん結婚式に出てくれないの?」

「いやいや、そうじゃない」

 慌てた様子で否定して、新しく届いたばかりのビールをひと口飲む。

「母さんと歩きたいんじゃないかと思って」

「お父さんいるのに、お母さんと歩いたらおかしいじゃない」

「そ、そうか」

 目を泳がせてまたビールを煽った父親を見て、不器用な人なのかもしれないと瞬きをする。

 なるべく早めに会いたいと言われていたのは、もしかしてこの話をしたかったからじゃないか?

「母さんはなにか言っていたか?」

「うーん……お父さん、手と足が同時に出ないといいねとは言ってたけど……」

「やりかねないね」

 菜乃の言葉に姉が苦笑する。父親は「それはないだろう」と蚊の鳴くような声でつぶやいた。

 菜乃から父親とはあまり仲がよくないと聞いていたが、特段そんな印象は受けない。むしろ仲睦まじい家族として目に映る。

 今菜乃が口にした通り、俺が挨拶にうかがった際に母親はそう話していた。ふたりは離婚後も子供を通して繋がっており、関係は良好だそうだ。
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