凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「歩けそうか?」

「はい。でも、本当にもう平気なのに」

 愚痴る菜乃の手を掴んだまま方向転換をして歩き出す。

「どこに行くんですか?」

「オフィス」

 念のため、体調不良について上司に報告するためだと判断したのだろう。しおらしくなった菜乃は黙ったまま俺の横で歩みを進めた。

 オフィスに入り、菜乃の上司でコントローラー業務をしていた女性スタッフに近づき挨拶をする。それから横に立つ菜乃を見下ろして口を開いた。

「菜乃」

 名前を呼ぶと、菜乃はものすごい速さで振り向いて目を鋭く細める。

 こんな場所で名前を呼ぶなとでも言いたげに。

「俺が今から言うことは、ここにいるスタッフ全員が証人だ。いいか?」

 菜乃が目をぱちくりとさせる。それは周りにいるスタッフも同じ。

「新川菜乃さん、俺と結婚してください」

「えっ!」

 一番初めに声を上げたのは、離れたところで静観していた紺野だった。シンガポールから戻りブリーフィングを終えたところだろう。

 その声を皮切りに周りがざわつき始める。
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