凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました～臆病な彼女を溶かす溺愛初夜～

「お父さん、ワガママ聞いてくれてありがとう」

　虹輝さんとは対照的に、緊張した面持ちでいる父親に声を掛ける。

「菜乃が父さんになにかをお願いしてきたのは、これが初めてだな」

「そんなわけないでしょ？」

　首を傾げても、父親は「いや、そうだ」と真面目な顔をする。

　人前に出るのが得意なタイプではないのは知っている。でも父親はこのロビー挙式で私と一緒に歩くことを承諾してくれた。

　二十七年間隔たりを感じていた父親だったけれど、この数か月間でぐっと距離が縮まり、思い出話や世間話に花を咲かせるほどになった。

　そして時間を共有する過程で、私はずっと大切にされていたのだとようやく気づけた。

　虹輝さんが一階に到着する。次は私と父親の番だ。

　足を踏み外さないようしっかりと階段を踏みしめる。椅子に座って拍手をする人の輪に朱莉ちゃんの姿を見つけた。顔を右に動かすと紺野さんの姿もある。