凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 再び窓外に視線を投げて、存在感をアピールする翼の光を静かに眺めた。

 日中のフライトは周りに気を遣って窓を閉めなくてはいけなかったりするけれど、夜間飛行は気にせず景色を眺められるので気楽だ。

 やっぱり飛行機はカッコいい。そんな感想を胸に抱いたときだった。

 突如機体が急降下する。シートベルトサインが出ていたので身体はしっかりと固定されていたが、ジェットコースターに乗っているような身体の浮遊を感じて、内臓が置いていかれるような不快さに襲われた。

 乗客たちからは悲鳴があがり、それが更に不安感をあおる。隣の男性も目を覚まし、なにが起きたのかと困惑した表情で辺りの様子をうかがっている。

 恐らくエアポケットに遭遇したのだろう。

 エアポケットとは飛行機が急激に下降する空域で、晴天乱気流とも呼ばれている。文字通り空気の乱れで、積乱雲のような雲の中だけでなく、高度一万メートル付近の雲でも起きる。

 これに巻き込まれると機体は上下に激しく揺れ、数秒で数百メートルも下降する場合がある。

 それなりの知識があるのであからさまに動揺を表に出したりはしないが、心は落ち着かず鼓動が速くなった。
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