凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「CAにはなれませんでしたけど、グランドスタッフの仕事が好きですし、まだ幼かった私と同じように、空を飛ぶことに不安心を抱いているお客様がいたら、少しでもそれを取り除き、楽しいフライトになるようお手伝いがしたいと思っています」

 素敵な心掛けだと思った。彼女のような信念を持って業務にあたれる人間はいったいどれくらいいるだろうか。

「聞かせてくれてありがとう。もっと簡単な理由かと思っていたから、心温まるエピソードで少し驚いた」

「あっ……なんか、すみません」

 我に返ったという様子で、グラスを持っていない方の手で顔を一生懸命に扇ぎだす。

 可愛らしい行動にふっと笑いがこぼれた。

「いや、いい話だった。おかげで明日からは、また違った気持ちで飛行機を飛ばせそうだ」

 ただ人を乗せて目的地まで運ぶのが仕事ではない。そこに詰まった乗客の想いも一緒に運んでいるのだと、わかっているつもりではあったが改めて気づかされた。
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