凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 まだ半分以上残っているノンアルコールのシャンパンを喉に流し込むと、新川さんもカクテルの入ったグラスに口づける。

 姿勢だけでなく、グラスの持ち方や、飲んだあと音を鳴らさないよう静かにテーブルに置く仕草など、ひとつひとつが洗練されていて騒がしくなく、見ていて気分がいい。

「椎名さんはどうしてパイロットになろうと思ったんですか?」

 再び絡んだ新川さんの瞳が揺れていてドキッとする。やっぱり酔いが回っているみたいだ。

 この話をしたら引き上げるか……。

「俺が幼稚園年少の頃に七夕の短冊に書いた願いは、『鳥になりたい』だった」

 キョトンとした顔をした新川さんの表情に苦い笑いをこぼす。

「おかしいだろう。でも俺はその頃からずっと空を飛ぶのが夢だった」

「なるほど。三、四歳の頃ってパイロットという職業を理解してない子がほとんどですもんね。空を飛ぶなら、鳥にならないとって思うのは筋が通っていますね」

「そんな真面目に分析しなくていいよ」

 俺のおかしな願い事を、真剣に受け止めようとする姿にクスクスと笑った。
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