凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「いらないよ」

「あ、じゃあ、レシート取っておいてもらっていいですか? あとからお渡ししますね」

「そうじゃなくて、お土産として君に買っていくから、お金はいらないと言っているんだ」

 新川さんは目をパチパチさせて、バッグに手を突っ込んだままの体勢で固まった。

 なにかおかしなことを言っただろうか。

「そんなつもりでお願いしたわけではないんです。物乞いみたいな真似をしてすみません」

 とんでもない失敗をしたかのように新川さんはしゅんと肩を落とした。

 自分が最善と考えた言動だったが委縮させてしまったらしい。

「いつも頑張っている新川さんへ、俺からの労いだと思ってもらえないだろうか」

「椎名さんから労われることなんて……」

「君たちグランドスタッフが的確に旅客対応にあたっているから、俺たちパイロットや客室乗務員は安心して空へ飛び立てるんだ」

 しっかりした口調で言えば、新川さんは恐縮しながらも嬉しそうに微笑む。

「そう言ってもらえて幸せです。これまでの努力が今の一瞬で報われた気がします」

 大袈裟なように聞こえたが、俺の言葉で彼女の想いが浮かばれたのならよかったと思う。
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