凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「部屋まで送っていくよ」

「ありがとうございます。でも、部屋にはひとりで戻れるので大丈夫です」

 新川さんは頭を下げてから、しっかりとした口調で俺の気遣いを断った。

「もう十一時を回っている。いくらホテルの中といっても、酔っている女性をひとり帰すことはできない」

 俺もこれは引けないという意思を見せると、新川さんは困ったような、それでいてちょっとくすぐったいような顔をする。

 嫌というわけではなさそうだ。内心安堵して歩き出すと、新川さんはすぐうしろをついてきた。

 グラスをカウンターに返してエレベーターに乗り、ほとんど会話がないまま部屋の前まで送り届けた。

 すぐに「おやすみ」と伝えて方向転換すると。

「椎名さん」

 慌てた声を背中に受けて何事かと振り向く。新川さんは背筋を伸ばして、胸の前で両手を揉みながら微笑む。

「ちゃんと言っていなかったですよね。三十四歳のお誕生日、おめでとうございます」

 明るい照明の下で、ゆったりと優しい笑みを浮かべる顔にはえくぼができていた。さっきまではその愛くるしい存在に気づかなかったので、思わずまじまじと見つめる。
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