凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「うん、可愛いよ。似合ってる」

 水風船が割れて中から水が弾き飛んだような感覚だった。抑えていたものがよどみなく溢れ出たような衝撃に襲われて、思わず胸に手を置く。

「そこじゃないよ」

 ネックレスを触ろうとして間違えたと勘違いしたのか、椎名さんは私の手首をやんわり掴んで首に移動させる。

 叫びたい衝動を必死に堪えて口を真っ直ぐに結ぶ。

 スキンシップがナチュラルすぎる。いやらしさは感じないし、あくまで紳士的な態度だからこそ、こちらも騒ぎ立ててはいけないと必死に動揺を隠す。

「大事にします」

 口からこぼれた声は掠れていて、目と鼻の先の彼に聞こえているか怪しいほど小さかった。

 薄くて形のいい唇が弧を描く。言葉はなかったけれど、満足そうにうなずく姿に名前のつけられない感情が胸を突き上げて、どうしたらいいのか困惑した私はネックレスを強く摘まみ上げた。
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