クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「お酒飲める?」
「少しだけなら……でもあんまり得意じゃなくて」
「じゃあ飲みやすいやつ頼んであげるよ」
言いながら彼は、ウェイターに声をかけると小声でなにかを耳打ちした。
そして少しすると、グラスがひとつ運ばれてきた。
「はい、どうぞ」
彼が差し出したそれは、少し大きめのグラスに注がれたまるでミルクティーのような見た目のカクテルだ。
試しにひと口飲んでみると、チョコミントのような甘くさわやかな味が口の中に広がった。
「おいしい……!」
「でしょ。ジュースみたいでグビグビいけちゃうんだよね」
まるでお酒じゃないみたい。こんなお酒あるんだ、と思わずコーヒーを飲む感覚で飲んでしまう。
「軽く飲めちゃうお酒って、実はいっぱいあるんだよ。せっかくだしいろいろ試してみなよ」
「でも、私そんなにお酒強くなくて……」
「大丈夫、度数弱めでってウェイターに頼むから」
そう言って彼はにこりと笑ってみせる。
人のよさそうな笑顔に戸惑いながらも頷くと、彼はまた一杯、ドリンクをウェイターに注文した。
それから、次から次へとドリンクが運ばれてきた。
彼の言う通りどれもジュース感覚で飲める口当たりのいいものばかりで、私は勧められるがままグラスを空にした。
そして、どれくらいの時間が経っただろうか。
気づけば頭はボーッとしてふわふわとした気分だ。すっかり酔っ払ってしまっているのが自分でもわかった。
「あれ、酔っ払っちゃった?」
「は、はい……そうみたいです」
「大丈夫?そうだ、俺の家この近くだから休んでいかない?」
家に誘うセリフと、そっと膝の上に置かれた手。
それらからようやく私は危機感を感じて、首を大きく横に振る。