クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
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どんなに嘘をついても、強がっても、やっぱり心の奥底では彼への想いが消えない。
今でも、由岐先生のことが好き。
そう気づいたら、胸の中に彼への想いがとめどなく溢れた。
つりあわなくなって、ふさわしくなくたって、そばにいたい。
そう、強く願ってしまう。
ある日の仕事中。
私はパソコンを目の前に、ぼんやりと上の空だ。
仕事に集中しなければいけない、そうわかっていても先日の由岐先生とのことが頭の中を占める。
由岐先生の肌の感触、指先の優しさ、溺れるほどのキス。全てはっきりと覚えている。
『……美浜、好きだ』
あれは、本当の気持ちだったのかな。
同情ではなく、彼の気持ちが込められた行為だと思ってもいいのかな。
「……荻、荻ってば!」
「わっ!」
すると、鏡花ちゃんの大きな声にはっと我に返った。
「なにボーッとしてるの、さっきから何度も呼んでるのに」
「ご、ごめん……」
「もう、しっかりしてよ。今のうちにゴミ捨てお願いしてもいい?」
「うん、いってきます」
呆れ顔の鏡花ちゃんに謝りながら、私は事務所のごみを袋にまとめて、病院裏の収集場まで持って行くべく小児科病棟を出た。