クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
*10
ずっとずっと、好きだった。
だけどこんなふうに事実を知って苦しむくらいなら、きちんと終わりにすればよかった。
そうすればきっと、こんなにも好きになる前に終わった恋だった。
「荻、なんだか元気ない?」
ある日の仕事中、鏡花ちゃんにたずねられ私は一瞬黙ってから小さく笑って首を横に振った。
「……ううん、そんなことないよ」
「そう?ならいいけど……無理していきなり高熱出すとか、心臓に悪いからもうやめてよね」
「あはは、ごめんね」
心配してくれている鏡花ちゃんに明るく装うと、私は「書類届けてくる」と言って小児科病棟をあとにした。
あれから一週間が経ったけれど、あれ以来由岐先生とは顔を合わせていない。
気まずいのか、忙しいのか。彼は頼のお迎えにも現れることはなく、小児科病棟にも姿を現していない。
当然だよね。
嘘がばれて、由岐先生からすればゲーム終了だ。私ひとりに構う理由がない。
自分の中で納得させるようにつぶやいて、落ち込んでしまう。
「荻ちゃん!」
本棟に向かい廊下を歩く途中、名前を呼ばれ振り向くと、そこには今日も明るい笑顔の原田さんがいた。