クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「お疲れ様です」
「お疲れ様!ねぇ、この前の話考えてくれた?」
この前の……?となんのことだったか一瞬考えて、お見合いのことだと思い出した。
あの時は迷ったけど……由岐先生を忘れるいい機会なのかもしれない。
「……はい。お話、受けようかと」
「あらよかった~!じゃあ早速会う日程決めましょ!私から彼に連絡しておくから!」
「はい、お願いします」
原田さんは嬉しそうに言って、私の都合を聞くと「決まったらまた報告するね」とその場をあとにした。
……これでよかった、よね。
これでその人とうまくいけば、頼にもパパができる。
私もそのうち由岐先生のことが忘れられる。
全てうまくいくかもしれない。
そう、何度も何度も胸の中で繰り返して。
その日の帰りには、原田さんから早速お見合いの日取りが決まったと伝えられた。
今度の日曜日、場所は銀座にある料亭だ。
さらには『お子さんも一緒にぜひ』と言ってくれていたようで、お言葉に甘えて頼も連れていくことにした。
頼を連れて料亭はちょっと緊張しちゃうけど……。
そんなことを考えながら保育所へお迎えに行き、頼とともに病院の敷地内を歩く。
「頼、日曜日はおでかけだよ。楽しみだね」
「うー?」
当然だけれどおでかけの意味がまだわからない頼は不思議そうに首をかしげる。
まんまるなその目がかわいらしくて私は思わず笑ってしまった。