クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



それから数日後の日曜日。

銀座にある大きな日本料亭の一室には、私と頼、仲人として原田さんと……お見合い相手の男性という4人が並んで座っていた。



「初めまして、佐倉と申します」



そう名乗り笑顔を見せたスーツ姿の男性、佐倉さんはややふっくらとした体つきの穏やかそうな人だ。



「初めまして、荻野美浜と申します。こちらが息子の頼です」

「よろしくお願いします。頼くんも、よろしくね」



テーブル越しに頼にも優しく声をかけてくれる。

けれど頼は彼に対し人見知りを発揮し、私の胸元に顔をうずめた。



「すみません、人見知りで」

「いえ、かわいらしいですね」



そんな頼にも佐倉さんはにこにことした表情を崩さない。

少し話をして、彼は大手企業の経理として働いていること、私より少し年上の35歳でなかなか縁に恵まれず独身でいることを知った。



「原田さんから荻野さんのお話をお聞きして、ひとりでお子さんを育てながらお仕事もして、率直にすごいと思いました。それに……正直言いますと見せていただいた写真がかわいらしくて、一目ぼれです」



頬を染めて言う彼はなんだかかわいらしい。

少しの時間でも穏やかでいい人なのだということは伝わってきた。



この人となら、うまくいくかもしれない。

この人と結婚して、いつか由岐先生のことも忘れて、頼も彼を『パパ』と呼んで。

私の由岐先生に対する恋が、過去になるだけ。

それだけなのに。



「そろそろ私はお暇しようかしら。このあと3人でお散歩でもしてきたらどう?」



それなりに時間が経った頃、原田さんの提案に私と佐倉さんは同意し部屋を出るべく立ち上がった。


  
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