クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「いえ、大丈夫です。ひとりで帰れます……」
「無理しないで。フラフラじゃん、そんな状態で帰らせるなんて心配だよ」
彼は私を丸め込もうとしているのか、強引に肩を抱き寄せる。
その体を押しのけて拒みたいけれど、酔っ払ってしまっているせいで手に力が入らない。
「本当に大丈夫ですから、離して……」
「そんなこと言わないでよ。ていうかきみも、出会いがほしくて参加してるんでしょ?じゃあいいじゃない」
先程までの優しげな笑顔とは違う、にやりとした笑みで彼は顔を近づける。
「やだっ……!」
それに対して大きな声をあげた、そのときだった。
「おい、なにしてる」
低く通った声がひとつ、その場に響いた。
誰……?
ぼんやりとした目で顔を上げると、そこにいたのは紺色のスーツに身を包んだひとりの男性だった。
背が高くすらりとしたスタイルと、真っ黒な髪。小さな輪郭の中に高い鼻と小さめの唇がバランスよく並んでいる。
なにより、目力のあるくっきりとした目が印象的で、ふわふわとした意識の中でも強く視界に飛び込んでくる。
かっこいい人……。
つい一瞬見惚れてしまう私の隣では、先程まで笑みを見せていた彼が顔を青くして慌てて肩から手を離した。
「ゆ、由岐先生!いらしてたんですか!」
「あぁ、今来たところだ。それで、なにをしてるんだ?」
じろ、と見たその圧のある眼差しに、隣の彼は身をすくめる。