クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



「まんまぁ、あっこー」

「うん、荷物持ってからだっこしてあげるね」



頼と出かけるとなるとどうしても増えてしまう荷物を持ち、それから頼を抱っこしようとした。



「荷物も頼くんもとなると大変ですよね、僕が頼くん抱っこしましょうか」

「あ、すみませ……」



佐倉さんはよかれと思って頼を抱っこしようとする。

ところが彼が頼に触れた瞬間、頼は火が付いたように「わああん!!」と泣き出した。



「わっ、頼どうしたの?佐倉さん、すみません」

「いえ、怖がらせちゃったかな」



おさまる気配のない大泣きの頼に、困った顔の佐倉さん、申し訳ない私。そんな空気に原田さんも焦ってフォローをしてくれる。



「頼くん眠くなっちゃったかな?ちょっと今日はお開きにしましょうか」

「そうですね。またゆっくりとお会いしましょう」

「すみません」



ふたりに頭を下げる私に、原田さんは「頼くんが落ち着くまでこの部屋使うといいわ」と気を遣ってくれた。

そしてふたりが去り、その場には私と頼のふたりとなった。



「頼ごめんね、びっくりしたね」



縁側で風にあたりながら小さな背中をトントンと撫でていると、頼は目いっぱいの力で私にしがみついたまま。



「ぱんぱぁ……」

「え?」

「ぱんぱぁ!ぱーぱーぁー!!」



初めて頼が口にした、『パパ』の名前。

それはまるで『パパがいい』と由岐先生を呼ぶかのようだ。



やっぱり頼はわかってるんだ。自分と由岐先生の血が繋がっていること。

佐倉さんを拒み、由岐先生を求めている頼の姿を見ていると切なさに胸が締め付けられる。


  
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