クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「ごめんね頼、パパとはもう一緒にいられないんだよ」
言い聞かせるように頼をぎゅっと抱きしめる。
一緒にいたい、そばにいたい。その気持ちは私も同じなのに。
「ママは、パパのこと忘れなきゃ……」
自分で口にした言葉に涙がこぼれ出す。
恋が過去になるだけ。
なのにこんなにも胸が痛い。
苦しくて切なくて、今でもこんなにも彼が好きだと思い知る。
声を押し殺しながら泣いていると、ふいに頼の泣き声がぴたりと止まる。
「頼……?」
すると次の瞬間、背後から誰かに抱きしめられるのを感じた。
堅い腕、ふと漂う香り、それだけで誰かなんてすぐわかる。
顔を上げ振り向くと、そこにいたのは息を切らせた由岐先生だった。
「由岐、先生……?」
「忘れなきゃ、なんて寂しいこと言うな。俺は美浜も頼も大切なんだ。……俺に言う資格なんてないのわかってるけど」
どうしてここに由岐先生が、そんな疑問よりも先に、会えた嬉しさが大きく勝る。
「資格がないのは私です。一方的に疑って、信じられなくて…」
私に、彼のそばにいる資格なんてない。
そう思うのに、抱きしめる腕が愛しくていっそう涙が溢れ出した。
「智成さんから聞きました。あの日、母の治療をしてくれたのは智成さんで、でも手術室の外で励ましてくれたのは由岐先生だって……。
なのにどうして、智成さんの嘘を否定しなかったんですか」
私の問いかけに、由岐先生は少し黙ってから、つぶやくように言う。