クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



「お前、付き合ってる彼女と来月結婚するって噂を聞いたが……そんなやつが、こんなところでまさか他の女性を引っ掛けてるなんてことはないよな?」

「ま、まさか!ちょっと楽しく飲んでたらこの子が酔っ払っちゃったみたいで!介抱してただけですよ!」



男性は声を裏返らせながら言い訳をする彼を見て、私へ視線を向けた。

お世辞にも目つきがいいとは言えない少しきつめな眼差しに、酔っ払いながらも体が少し強張った。

すると男性はこちらへ向かって手を伸ばし、突然私をお姫様抱っこの形で持ち上げる。



「ひゃっ!」

「ならその介抱は俺が引き継ごう。ホテルに部屋を用意させるから、そこで休むといい」

「えっ、あの……!?」



突然のことに驚き、足をバタバタとさせもがいてしまう。

けれど彼はそれも気に留めず、私のバッグを手に取りその場を歩き始めた。





そして会場を出ると、近くにいたホテルの従業員に声をかけなにかを話してから歩き出す。

その足でやってきたのは、ホテルの最上階フロアの一番奥にある部屋だった。



彼がドアを開けると、そこは白い壁に青い絨毯の敷かれた廊下がある。

そこを抜けると大きなソファとローテーブルが並び、その奥には窓ガラス越しにテラスが見える。



ぱっと見でベッドルームが見えないほど広々としたその部屋が、俗に言うスイートルームであると気付いた。



ちょっと休むのに使うような部屋じゃないんですけど……!

これってあとで料金請求されたりしないよね?

ていうか私、さっきも迂闊に連れ出されそうになったのに、またもこうして男の人に部屋に連れて来られて大丈夫なのかな。



ぐるぐると思考をめぐらせる私に、彼は奥のベッドルームへと入ると大きなベッドに私をそっとおろした。



  
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