クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「あの病院に同じくらいの若い先生で由岐先生って他にいますか?」
「え?いや、同世代ではいないと思うけど」
その言葉に確信を得た瞬間、手の感触や低い声があの日の記憶としっかりと重なった。
この人、だ。
何年経っても忘れるはずがない。
あの日私の心を救ってくれた。お母さんのことも助けてくれた。
ずっと探してた、『ユキ先生』だ。
やっと会えた嬉しさから、涙がポロポロとこぼれ出してしまった。
「えっ!?いきなりどうした!?」
突然泣き出した私に由岐先生は驚きの声をあげる。
そして私に視線を合わせるように、目の前に屈んでみせた。
「すみ、ません……まさか本当に会えるとは、思わなくて……」
「え?」
「私、6年前に大きな事故で母があの病院に搬送されて……そのとき、由岐先生に助けていただいたんです」
涙で声を詰まらせながら伝えると、由岐先生は少し考えてから口を開く。
「6年前の大きな事故……もしかして、トラックの居眠り事故の?」
「はい」
「あの時は負傷者も多くうちに搬送されてたからな。覚えているのといえば、重症の母親と、高校生くらいの娘さん……」
一度に沢山の患者が搬送された事故だ、彼の記憶の中でも印象に残っていたのだろう。
言いかけたところでその『高校生くらいの娘』が私であると気づいたようで、驚きながらも納得したように頷いた。