クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



「あのとき由岐先生が励ましてくれて、それがとっても嬉しくて心強くて……それからずっと忘れられなかったんです」



あのとき、あなたが『大丈夫』と言ってくれたから怖くなかった。信じて待てた。

誰かの言葉と思いやりがここまで心の支えになるのだと知った。

その気持ちは今の私につながっている。



だから、この想いをずっとあなたに伝えたかった。

つぶやいた私に、由岐先生は少し黙ってから私の左頬に右手を添え、親指でそっと涙を拭う。



「……そこまで思われるほどのことは、してない」



それは、医者として当然ということなのだろうか。

どこか冷めた声で言う彼に、私は添えられた手に自分の手を重ねる。



「そんなことないです。私にとっては大きいことだったんです」



医者として患者やその家族を励ますのは普通のことなのかもしれない。

彼にとってはなんてことないひと言だったのかもしれない。



だけどそれでも、私にとっては大きなことだった。

あの少しの瞬間から、由岐先生のことが頭から離れなくなってしまうくらいに。



  
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