クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



それから由岐先生に会うことはなく、日々を過ごすうちに2ヶ月が経った。

時折彼と過ごした夜を思い出すと胸が締め付けられたけれど、その感情は必死に押し殺して。



そんなある日。



「うう……胃がムカムカする」



朝から気持ち悪さが続いており、私は仕事中もデスクでぐったりとしていた。



「ちょっと、荻。顔色悪いけど大丈夫?」

「なんか朝からずっと気持ち悪くて……」

「二日酔いか食べすぎじゃないの?よっぽど体調悪いなら早めに休憩入ってきなよ」



見かねて言ってくれた鏡花ちゃんの言葉に甘え、私は予定より少し早く休憩に入ることにした。

そしてトイレへ向かった……けれど、あまりの気持ち悪さにそこで吐いてしまった。



「うっ、げほっ……」



吐いてしまうなんて久しぶりだ。

でも昨日は食べ過ぎてもいないし、お酒も飲んでいない。なのになんでいきなり?

胃腸炎かなにかかな、一度内科にかかろうか……。

そこまで考えてふと気づく。



そういえば、先月生理きてない。

もしかして……いや、そんなまさか。



思い当たることといえば、2ヶ月前の由岐先生とのことしかない。

だけど、いや、そんな。



不安と戸惑いが胸に浮かぶ。

とりあえず悩んでいても仕方がない、と私は体調不良を理由に早退させてもらい、その足で職場から少し離れたところにある個人病院の産婦人科へ向かった。



そこで初老の男性医師から告げられたのは



「おめでとうございます。妊娠されてますね」



予想通りの、そのひと言だった。




  
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