クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「……小児科の看護師から聞いたけど、俺が向こうに行ってから未婚で子供を生んだらしいな。それがあの子か」
その問いかけに小さく頷く。
気づかれてしまったかもしれない。だって、頼の顔立ちはどこか彼を思わせる。
それに、血の繋がった親子だ。本能的になにかを感じ取るのかもしれない。
だけど、そうだとしても。
「もしかしてあの子供は、俺の……」
「違います!!」
私は思わず語気を強くして、彼が言いかけた可能性を否定した。
「勘違いしないでください。あの頃恋人がいるって言ったじゃないですか、その彼との子です」
嘘に嘘を重ねて。
それでも、本当のことを言うわけにはいかないから。
「ただ、いろいろあって結婚まで至らなかったから……あの子に父親はいません。私がひとりで育てていくって決めたから」
だから、もうこれ以上構わないで。
嫌な女だったって、忘れてほしい。
願うように胸の中で繰り返す。ところが彼は、そんな願いとは裏腹に私の手をそっととった。
突然触れた手にドキ、とときめいてしまう。
次の瞬間彼が発したのは
「なら、俺にも手伝わせてくれ」
そんな、予想外のひと言だった。
俺にも、手伝わせてくれって……
「え……?」
その言葉の意味がわからず首を傾げた私に、由岐先生は真剣な顔で言葉を続ける。
「一度は寝た相手がひとりで子供を育ててるなんて状況を、見て見ぬふりなんてできないだろ。だから、俺にも出来ることがあれば言ってほしい」
突然の申し出に戸惑うと同時に、嬉しさも込み上げる。
けれどすぐに我に返ると、私は彼の手を振り払った。