クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「彼女、循環器科医の主任の奥さんでね、ちょっと上から目線で物を言うところがあるから煙たがられてるんだよね」
「そうなんですか」
「でもご主人が有名大学卒業で若くして主任に就いたエリートで、周りもなにもいえなくてさ。もしなにか言われても流して聞いていいから」
これが鏡花ちゃんの言っていたマウントというやつだろうか。
旦那さんの立場が偉いからと自分も偉くなったように感じてしまう人は少なくないのかもしれない。
まぁとにかく、そういう人とは深く関わらないにこしたことはないよね。
そう考えているうちにランチ会は始まった。
まずはそれぞれ自己紹介をして、子供たちとともにランチを食べた。
みんなそれぞれ近い子供を持つお母さんということもあり、子供がぐずったり駄々をこねても『そういうこともあるよね』と分かり合え、気兼ねせず食事ができることはありがたいと思った。
そのうち子供たちはキッズルームで遊び始め、お母さんたちはデザートとお茶の時間……だけれど、頼は慣れない人たちの中のせいか私の膝の上に座ったままだ。
「あら、頼くんママのお膝の上で大人しくしてていい子だねぇ」
「普段はこんなに大人しくないんですけどね。ちょっと人見知りっぽいところがあって」
見た目は由岐先生に似ているけれど、性格はどちらかというと私寄りかもしれない。
私の膝の上でジュースを飲む頼の頭を軽く撫でていると、こちらへ視線を向けたのは先程『気をつけて』と言われていた主任夫人だ。
じろ、とこちらを見たその目に、緊張感で身を強張らせる。
「ねぇ、噂で聞いたんだけど、荻野さんって未婚でその子生んだって本当?」
って、いきなりその話題。
あまりにもストレートすぎる質問に、その場の参加者たちは気まずそうにこちらを見る。
それに対し私は、どんな顔で答えるべきか迷いながらも苦笑いで頷いた。
「はい、本当ですよ」
「えー!よくひとりでも育てようなんて思ったよね。ていうかなんで結婚しなかったの?」
ズバズバと言う彼女に、加持さんが見かねて口を挟む。