クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「悪いけど、今日のところは失礼する」
由岐先生は私から頼を抱き上げると、そのまま私の手を引いて歩き出す。
「あっ、あの由岐先生……」
なんで由岐先生がここに?
なんであんなことをみんなの前で言ったの?
そんな驚きや戸惑いもあるけれど、それ以上にまずこうして腕を引かれることに嬉しさを覚えてしまう自分が憎い。
カフェを出てそのまましばらく歩くと、病院の敷地内にある噴水広場に出たところで由岐先生はようやく足を止めた。
「あの、どうしてあの場所に……?」
「参加者の中にうちの看護師もいてな。昨日、ランチ会があるということから参加者、それから嫌な噂まで事細かに話しているのをたまたま聞いたから」
それで気にかけてわざわざ来てくれたということ?
なんで、どうしてそこまで?
それに……。
まだ少し混乱する頭で、先ほどの由岐先生の発言を思い返すと、私はひとつ呼吸を置いて彼に問いかけた。
「どうして、頼の父親が由岐先生だと知っているんですか……?」
彼の父親発言に事実を認める私に、由岐先生は納得したように頷く。
「やっぱりそうだったのか」
「え!?」
やっぱり、って……確証を得ていたわけじゃないの!?
その返事に驚きを隠せずにいる私に由岐先生はふっと笑う。そして腕の中の頼の顔をまじまじと見た。
「子供の頃の俺の顔そっくりだからな。もしかしてと思ってカマかけてみた」
「カマって……」
「俺が普通に聞いたところで、お前は『違う』と言い張るだろ?」
う……見透かされてる。
けど、知られてしまった。知られてしまわないようにと思っていたのに。
カマかけに引っ掛かった自分を憎いと思いながら、ぐっと拳を握る。
そんな私に由岐先生は「美浜」と声をかけた。