クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「美浜にとってはそうでも俺にとってはたかが、じゃない。俺は、なんの感情もなく抱いたりしない」
真剣な眼差しで言い切った彼に抱かれたままの頼は、人見知りすることなく、むしろ懐くように彼の頬に軽く触れてみせた。
まるで由岐先生を、父親だとわかっているかのように。
そんな頼に視線を向けると、由岐先生は優しく目を細めて微笑んでみせた。
いつもの無愛想な顔からは想像つかないような、穏やかな表情だ。
彼の言葉が嬉しくて、目の前の光景が尊い。
だけど嬉しさを感じるほど、間に受けちゃいけないと自制心が自分に呼びかける。
けれど由岐先生は、頑なな心に触れるように私に顔を近づけると、そっと額を合わせた。
「『ひとりで育てる』なんて寂しいこと、もう言わせない」
心に呼びかけるような、真っ直ぐな声に胸が強くときめく。
……これも今だけの夢。
彼の優しさは、初めて会った日から変わらない。
優しいからこそ、子供ができたから責任を取ろうとしてくれているだけ。
私相手に気持ちなんてきっとない。
あるとしたら、ただの同情だ。
だからその言葉を真に受けたり喜んではダメ。
……そうわかっているのに、どうしても彼への愛情が込み上げてしまう。
好きな人が、一緒に子供を育てようと言ってくれているのに。
嬉しさと切なさが、胸の奥で混ざり合う。