クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



「わっ、なに!?」



驚き鏡花ちゃんとともに音がした病室へ向かうと、そこでは男の子がふたり、取っ組み合いの喧嘩をしている。



「えっ、どうしたの!?」

「ゆうきくんね、朝からげんきなかったの。だからこうすけくんが、あそぼーってゆってたのにね、ゆうきくんがおこっちゃってけんかになっちゃったの」



同じ病室にいた子供たちから話を聞くに、遊ぶ気分じゃなかったゆうきくんと、何度も遊びに誘っていたこうすけくんが、互いの態度にイライラとし、喧嘩に発展してしまったのだろう。



「こらふたりとも、やめなさい!」



鏡花ちゃんが間に入りふたりを離そうとするけれど、小学生高学年のふたり相手となると簡単にはいかないようだ。



「どうかしたのか?」



そこへ、騒ぎを聞きつけた様子の由岐先生が駆けつける。



「子供たちが喧嘩してるみたいで……」



彼へ状況を説明しようとした、そのとき。

ふたりは鏡花ちゃんによって離されたけれど、ゆうきくんの苛立ちはまだ治らないようで、咄嗟にベッド横の小さな花瓶を手に取る。

そしてイライラをぶつけるようにそれを思い切り投げた。

けれどそれはこうすけくんの上を大きく超え、その後ろにいた私の方へと向かって飛んできた。



「きゃっ……!」



ぶつかる、そう覚悟してぐっと目をつぶると、不意に誰かに抱きしめられる感触がした。

ガチャン、と花瓶が床に落ち割れた音を聞いてそっと目を開けると、そこには由岐先生が私を庇うように抱き寄せていた。


  
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