クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「これは……」
「喧嘩したり癇癪を起こして暴れたり……そんな子を止めるときにできた傷です。鏡花ちゃんたちも、よくあることって言ってました」
あはは、と笑いながら私は袖をおろし、由岐先生に向かい合うように椅子に座る。
「今日のゆうきくんもそうなんですけど、子供たちも不安定になっちゃう時期があるんです。親と離れる不安や学校に行けない寂しさや、思うようにならない自分の体がもどかしくてイライラしたり」
いつもは明るくて元気な子供たち。だけどそれはいつだってそうなわけじゃない。
ちょっとしたきっかけや気持ちの波で、落ち込んだり滅入ったりしてしまうこともある。
それを悲しみで表す子もいれば、苛立ちや怒りに変えてしまう子もいる。
「でもそういう気持ち、私もわかる気がするんです」
私の言葉に、由岐先生は不思議そうにこちらを見た。
「私、6歳下に妹がいるんです。甘えっ子で体が弱くて、両親がそんな妹のことばっかり構うことが寂しくて、その苛立ちをしょっちゅう親にぶつけてたんです」
状況は違うけれど、親に甘えられない寂しさや我慢から募るストレスを強い言葉に変えてぶつけることしかできなかった。
そんな幼い頃の自分と、子供たちの姿が重なるから。