クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「ごめんなさい……ぼく、学校の友だちからの手紙読んでたら、楽しそうなみんながうらやましくて、なんで僕だけって悲しくなって……」
「そっか、それで元気なかったんだね。ごめんね、気づいてあげられなくて」
「こうすけもぼくのこと励まそうとしてくれたのに、イラついて……先生にケガさせて、本当にごめんなさい」
話しながらポロポロと涙をこぼすゆうきくんに、由岐先生は先ほど私にしたように、頭を撫でた。
その表情は頼を見つめるときと同じ、優しい笑顔だ。
「ごめんなさいが言えるきみはいい子だな」
「ぼく、いい子……?」
「あぁ。不安になったり寂しくなったりするときは誰でもある。だからそんなときは先生や看護師さん、それに彼女になんでも話してごらん。
大丈夫だ、みんなきみの味方だから」
『大丈夫』。
私の心の中にあったおまじないは、今この場所でもやっぱり、不安を包み込むように響いた。
やっぱり、好きだ。
医師としての彼も、ひとりの男性としての彼も。
だからこそ同情から出る言葉にも心が揺らぎそうになるけれど。
だからこそ、揺らいじゃいけないと何度も自分に言い聞かせる。
手の甲にはまだ、彼のキスの感触を残したまま。