クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「えっ、明日までアパートの水使えないの!?」
その日のお昼休み。
鏡花ちゃんとともに中庭のベンチでお昼ご飯のパンを食べながら今朝のことを話すと、鏡花ちゃんは驚いた声を上げた。
「そう。アパートの水道管が破裂したとかで、修理が明日の夜までかかる予定なんだって。おかげで今朝も頼の手もテーブルも全部ウェットティッシュで拭いてきたよ」
「うわぁ……でも確かに、荻のアパート結構古かったもんね」
鏡花ちゃんの言葉に頷きながら思い浮かべるのは、私と頼が住む築30年の2階建てアパートだ。
住民も大家さんもいい人だし、家賃も安くていいところなんだけど……ところどころガタがきてるんだよね。
もう少し新しくて綺麗な家に、とは思うけれど頼のためともしもの時のために少しでも節約してお金は貯めておきたいし。
「でも明日の夜までってなると大変じゃない?お風呂も入れないし食事の支度も不便だし」
「そうなんだよね。子供は汗かくからお風呂入れないのは無理だし……」
そう話していると、鏡花ちゃんの胸ポケットの携帯が音を立てる。
「げっ、主任からだ!なんだろ……ごめん荻!私ちょっと病棟戻るね!」
発信元を見て嫌そうな顔をしながら、鏡花ちゃんは慌ただしくベンチを去った。
鏡花ちゃん、看護師さんのなかでもしっかりしていて信頼が厚いからなにかと忙しそうだなぁ。
それにしても、私は今夜どうしよう。
ホテルでも取ろうか、でも水が出ないだけで大袈裟かな。この辺りだと値段も結構かかるし……。
うーんと頭を悩ませていると、突然頭の上に誰かが寄りかかる重みを感じた。