クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「なに難しい顔してるんだよ」
「わっ、由岐先生」
その声と重みに顔を上げると、背後から私の頭に寄りかかるように由岐先生が立っている。
「なにかあったか?」
「なにか、というか……そんな大したことではないんですけど」
彼にわざわざ話すことでもないかもしれない。けれど問いかける瞳に、私はアパートの水道管工事のことを由岐先生にも話した。
「まぁ確かに、それじゃあ美浜も頼も不便だろうな。ホテル代出してやるからどこか泊まれば」
「そ、それはダメです!そこまでお世話になる筋合いないですし!」
「筋合い、ねぇ」
さすがに金銭面でお世話になるのはいけない、と私は慌てて首を横に振る。
すると由岐先生は「そうだ」と思いついたように言った。
「ここから近くて子供がいても気兼ねせず泊まれて、そのうえタダのところを紹介してやろうか」
「え?そんなところあるんですか?」
「あぁ。そこでいいなら連れて行ってやる。今日仕事が終わったら保育園まで迎えに行くから、頼と待ってろ」
由岐先生は言い切ると、私の返事を聞くこともなくその場をスタスタと去って行った。
ここから近くて子供がいても大丈夫、さらにタダで泊まれる……なんて、そんなところ本当にあるのだろうか。
けど、あるならありがたいことには変わりない。
由岐先生のお世話になるのは、本意ではないけれど、状況が状況だけに仕方がない。