クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
そう自分を納得させた私はお昼休みを終え、午後の仕事を済ませると夕方に頼を保育所へと迎えに行った。
そこで由岐先生とも合流し、彼の車で一度私の家へ向かってもらい一泊分の荷物をまとめてから出た。
そして彼の車で十数分ほど走った先にあったのは――。
「ここだ」
港区にある、見た目からして立派な高層マンションだ。
空まで届きそうなほど背の高いその建物を見上げると、「はぁ……」と圧倒されてしまう。
「あの、ここは?」
「俺の家だ」
「俺の家……って、え!?由岐先生の!?」
驚く私を置き去りに、由岐先生は私と頼の荷物を手にするとスタスタと歩いていく。
慌ててついて中へ入ると、まず広がるエントランスはまるで高級ホテルのロビーのようだ。天井は高く、黒い革張りの上質なソファも置かれている。
コンシェルジュまでいることに戸惑いながら、私は由岐先生に続いてエレベーターへ乗り込んだ。
「あの、由岐先生の家ってつまり……ここに泊まるってことですか?」
「あぁ。うちならもちろん頼がいても構わないし宿泊費もかからない。ちょうどいいだろ」
由岐先生は淡々と言うものだから、確かにと納得しそうになってしまう……けど。
「だ、ダメです!家に泊まるなんて、そこまでは甘えられません!」
「ならホテルにでも泊まるか?美浜が希望するならこの近くのホテル取るけど。もちろん支払いは俺で」
「うっ……」
それはそれで、余計嫌だ。
だけどこの付近のホテルは私が自腹で払えるほど安くないだろうし、頼と荷物を抱えて今から離れたところのホテルを探すのも大変だし……。
由岐先生は、どの選択肢も選べない私を見てふっと笑うと頭を軽く撫でた。