クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「余計なことは考えず、こういうときくらい頼れ」
「……すみません」
そんな優しいことを言われたら折れないわけにもいかない。
私が小さく頷くと同時に、エレベーターはポンと音を立てて止まった。
エレベーターから降り上層階のフロア一番奥のドアを開けると、そこには広い玄関と廊下にいくつかのドアが並んでいる。
その中の突き当たりの部屋へ入ると、横長いリビングが広がっていた。
壁一面の大きな窓からは東京の景色が一望できる、なんともロマンチックな部屋だ。
すごく豪華な部屋……。
それにしても、と室内を見回すと、置かれている家具は白いソファにライトグレーのラグマット、ガラス素材の高そうなローテーブル……。
モデルルームのようなお洒落な家具が置かれたその部屋はどう見ても子供連れにはふさわしくない部屋だ。
「やっぱり私、この部屋には泊まれません……!」
「なんでだ?」
「だって子供ってすぐ汚すんですよ!?特に頼は最近掴み食べも多くて、スプーンも使ってると思ったらいきなり投げつけたりするんですよ!?こんな高そうな家具弁償できません!」
青い顔で力説する私に、由岐先生は「そういうことか」と頷く。
「気にするな。汚れたら掃除すればいいし、多少傷がついたところで支障ない」
「けど……」
「そんなこと考えなくていいから、風呂入る準備しておけよ。今風呂沸かすから」
由岐先生はそれだけを言うとリビングをあとにする。