クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
そんなこと、って……普通は家を汚されるのも、家具に傷をつけられることも嫌だと思うのに。
とことん甘やかされている、と実感する。
それから少ししてお風呂が沸き、由岐先生に促されるがまま私たちはお風呂へ入った。
ほこりひとつ落ちていない洗面所と脱衣所を抜けた先にある浴室もこれまた広く、初めてプールにでも来たかのように頼は大興奮だ。
まるで高級ホテル……。
彼の暮らしを知るほど、本当に住む世界が違うんだ、と思い知らされる。
圧倒されながらも入浴を済ませ、私と頼は部屋着に着替えてリビングへと戻った。
すると室内に彼の姿は見えない。
「あれ、どこ行ったんだろ……」
キョロ、と辺りを見回すと、壁際に置かれた背の高い本棚が目に入る。
先程は特に気に留めなかったけれど、よく見ると沢山の本が並べられている。
これ……。
背表紙ひとつひとつを見ると、それが医学書であることに気づいた。
日本のテキストから海外のものまで。どれもフチがよれていて何度も読んでいるのだろうと察した。
由岐先生もこうして勉強してるんだ。
そうだよね、院長の息子というだけで海外で活躍できるほど甘くない。
日本でも海外でも、勉強しながら医師として頑張っているんだ。
「すごい人、だなぁ」
彼の努力を感じる私を置き去りに、頼はとてとてとダイニングの奥へ歩いていく。
「あっ、ちょっと頼……」
どこへいくのと慌てて追いかけると、ダイニングの奥にはクローズドキッチンがあり、フライパンを手にする由岐先生がいた。
ちょっと意外なその姿を思わず見つめていると、彼はその視線に気づいたようにこちらを見た。