クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「ん〜!おいしい!」
思わず声に出す私に、隣で頼もスプーンを手に「んー!」と声を上げた。
「ね、頼もおいしいね」
「そうか、ならよかった」
最初はスプーンを使い少しずつごはんを食べていた頼だけれど、次第にスプーンを投げ捨てて、手掴みで食べ始める。
家ではいつもの光景だけれど、この綺麗な家でされると汚して大丈夫だろうかとヒヤヒヤしてしまう。
あっという間に頼の周りにはごはんやそぼろ、卵焼きのかけらが散らかった。
けれど由岐先生は一切気にする様子もなく、その姿を目を細めて見つめている。
「じゅーしゅう」
「ん?あぁ、ジュースか」
由岐先生は頼用の小さなコップにリンゴジュースを注いで手渡す。
けれど頼はテンションが上がっているのか、そのコップを思い切り振り上げた。
「あっ、こら頼!」
まずいと思ったときには遅く、コップの中身は由岐先生へとかかり、頭の上から彼を濡らした。
さ、さすがにこれはまずい……!
「由岐先生すみません!ほら頼もごめんなさいして……」
私は慌ててバッグからハンカチを取り出す。
けれど次の瞬間彼は、声をあげておかしそうに笑ってみせた。