クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
由岐先生の言葉はやっぱり、私に希望を与えてくれる。
たったひと言が嬉しくて勇気をくれて、自然と笑みがこぼれてしまう。
しばらく見つめ合うと、由岐先生はテーブルにグラスを置く。
そして私の頬にそっと手を添え、ゆっくりと顔を近付けた。
「ダメです!」
「ぶっ」
けれど私はつい、その顔を両手で思いきり押しのけた。
「なんでお前はそんなに俺を拒むんだよ」
「だって……その、婚約者はどうしたんですか!」
勇気を出してたずねたことに、由岐先生は少し驚いてから言う。
「なんだ、美浜もその話知ってたのか」
「……はい、噂で聞いて」
私の言葉に納得したように頷き、彼は言葉を続けた。
「婚約者の件なら、海外に行く前の時点で断った」
「え……?」
断った……?
まさかの言葉に驚きを隠せない。
「そもそも親が決めただけの話で、俺も彼女とは数回会っただけで食事くらいしかしてないしな」
そうだったんだ……。
由岐先生の言葉に、心からほっとしている自分がいる。
だからといって彼との関係が変わるわけじゃないのに。
「でもどうして断ったんですか?相手、有名病院の娘さんだったんですよね?」
「病院の利益につながるからとはいえ、親が勧めるまま結婚していいのかっていう迷いはずっとあってな。それが美浜に会ってから確信に変わった」
「え?」
私?
意味がわからず首を傾げると、由岐先生はふっと笑って再びこちらへ手を伸ばす。
そして私の髪を指先で優しく撫でた。