クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「あの日、『ずっと好きだった』って言いながら泣いて見せただろ。そんな美浜を見て、結婚っていうのはここまで想える人とするべきだと思ったんだ」
あの日の私を見て、そう思ってくれた。
その言葉がとても嬉しくてこの心を揺さぶる。
「心惹かれる人にしか触れたくない。永遠なんて誓えない」
真っ直ぐに見つめてその黒い目に私を映すと、ゆっくりと近付いて額にキスを落とした。
……そんなふうに言われたら、期待する。
触れるその唇に心が込められているんじゃないかって思ってしまう。
だけど、婚約破棄をしているからといって私がそのポジションに収まるわけじゃない。
私と由岐先生がつりあうわけがない。
それに今更、散々嘘と拒否を重ねた私は本当のことを素直になんて言えない。
彼にはもっとふさわしい人がいるはず。その人と出会い、一緒になってくれたら。
そう願うのに心は戸惑い揺れて、頬を撫でる指先に愛しさがあふれてしまう。
視界を覆う彼の顔に、拒まなきゃ、受け入れちゃいけない、と思うのに。
重ねられる唇に、私は目を閉じそのキスを受け入れた。
柔らかな唇と、微かにアルコールの味が混ざり合う。
あの夜よりもはっきりと鮮明に、より強く、由岐先生のぬくもりを感じている。