クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
確かに、生活の面でも金銭面でもこれからもっと大変になるだろう。
それにもしも私になにかがあったとき、怪我や病気で働けなくなったら?事故で命を落としたら?頼はどうなっちゃうんだろう。
そう思うと確かに、父親という味方はいたほうがいい。
それに未婚で子持ちの訳ありな私でもぜひ、と言ってくれる人がいるだけでもすごいことだ。
……そっか、そういうのもありだ。
他の誰かと結婚して、由岐先生との関係を完全に断ち切る。
由岐先生は夫婦になろうと言ってくれているけれど、それはきっと責任感や同情からだろう。
つりあいもしない私を本気で想っているわけがない。
それに、今後なにかの拍子に彼が私自身を愛しているわけじゃないと知って傷つくくらいなら、他の誰かと結婚して今度こそ本当の別れをとるほうがまだつらくない。
『心惹かれる人にしか触れたくない。永遠なんて誓えない』
彼の言葉を思い出すだけで、この胸は期待してときめいてしまうけれど。
――プルルル
そんなことを考え続けていた仕事中。
突然鳴り響いた電話の音にはっとして受話器をとった。
「はい。小児科病棟、荻野です」
『あっ、キッズルームです。荻野さん、頼くんなんですが……』
それは保育所からの電話で、頼が38度近くまで発熱したため迎えにくるようにとのことだった。
やっぱり熱上がっちゃったか……。
私は鏡花ちゃんたちに事情を話し頭を下げると、急いで保育所へと向かった。
「頼、来たよ!」
駆け足で向かうと、保育士さんに抱えられた頼は熱で苦しいのか泣きじゃくっている。
「うっ……うぁぁぁんっ、まーんまぁー!!」
「ごめんね、お待たせ。よしよし」
頼を受け取ると、その手は必死に私の腕にしがみつく。