クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「荻野さん、すみません。お仕事中だったのに」
「いえ、こちらこそすみません……頼、ずっとこの状態でしたか?」
「はい。苦しくて不安で、早くママに会いたかったんでしょうね」
保育士さんにお礼を言うと、家へ向かい歩き出した。
泣きじゃくっていた頼はいつのまにか腕の中でぐっすりと眠っている。真っ赤な頬と濡れた目元が胸を締め付けた。
不安、だったよね。
本来なら朝の時点で休ませて、私がそばにいてあげればよかったのに。
私の都合で預けて、つらい思いをさせて……ダメな母親だ、私。
「ごめんね、頼……」
頼への罪悪感で胸は埋め尽くされて、腕の中の頼をぎゅっと抱き締めた。
その後頼を病院へ連れて行き、帰宅後もぐずったり吐いてしまったりする頼の看病で深夜遅くまで眠れなかった。
けれどその甲斐あってか翌日には熱も下がり、頼はすっかり元気になった。
子供の回復力ってすごい、そう思うと同時に、今度は私の体温が38度を超えていた。
体重い、足がふらつく……昨日も早退しちゃったけれど、この体調で出勤するわけにもいかない。
そう判断して、私は鏡花ちゃんへ休む旨を連絡した。電話口からは『わかった!お大事に!』と明るい声が返ってきてほんの少しだけ安心した。
とりあえず病院に行って薬をもらって、あとは家で寝ていよう。
「まんまぁ?」
「大丈夫だよ。今日はママがお医者さんのところ行くから、頼もついてきてくれる?」
「んー!」
頼を不安にさせてしまわないように、笑顔を作って家を出る。
けれどアパートの階段を降り切ったところで、足が止まってしまう。