クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「まんまぁー?」
「ごめんね、頼ちょっと待って……」
歩かなきゃ、そう思うのに動けない。
それどころか足に力が入らず、その場に膝をつきうずくまってしまう。
自分がここで倒れて、頼がどこかへ行ってしまったら、頼になにかがあったら。
そんなの絶対ダメ、そう分かってるのに動けない。
視界が回る、汗が滲む、寒い、体が重くて。
「よ、り……」
そのまま体は地面に倒れて、意識が遠くなっていく。
ごめんね、頼。
こんなママで、頼りなくてごめん……。
「――浜……、美浜!!」
遠くで、由岐先生の声が聞こえた気がした。
ふと目を覚ますと、私は柔らかなベッドの上にいた。
大きな窓から照らす日の明るさと、清潔感のあるシトラスの香りが鼻をくすぐるその部屋は、自宅ではないけれどどこか見覚えがある。
「ここ、は……」
掠れた声でつぶやくと、同じタイミングで部屋のドアが開いた。
そこから姿を現したのは、白いワイシャツ姿の由岐先生だ。
「起きたか」
「由岐先生……ここって」
「俺の家。病院じゃ落ち着かないだろうし、連れてきた」
そっか、由岐先生の家。だからどこか見覚えがあったんだ。
「けど、どうして由岐先生が……?」
「昨日頼が熱出して早退したって保育士から聞いてな。家まで様子見に来たら、アパートの前で美浜が倒れてた」
たまたまあの場に来てくれたんだ……。
彼が気にかけて来てくれてよかった、そう思ってからふと頼のことを思い出す。
「はっ、頼は!?」
咄嗟に体を勢いよく起こすけれど、くらっとめまいがしてひっくり返りそうになってしまう。
そんな私に由岐先生はすぐさま駆け寄り、上半身を抱き留めた。