クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「いきなり飛び起きるな。さっきまで39度近くあったんだから」
呆れたように言いながら、彼はまくらの角度を変えクッションのようにしてくれる。
そこによりかかると負担なく体を起こすことが出来た。
「由岐先生、頼は……?」
「事情を話して保育所に預かってもらってる、安心しろ」
「そっか、よかった……」
それを聞けただけで心の底から安心した。
「美浜は、大丈夫か?」
「え?」
「熱じゃなくて、心のほう。ずっとうわ言みたいに『頼ごめん』って言って泣いてたから」
由岐先生は言いながら私の目元をそっと撫でる。
胸の中でずっと繰り返してた言葉は、声に現れてしまっていたのだろう。その不安を誤魔化すように私は笑顔を作る。
「大丈夫です。ちょっと頼が心配だっただけで、私は本当に……」
『大丈夫』。
言い聞かせるように再び言おうとしたそのとき、目からは自然と涙がポロッとこぼれた。
「あれ、なんで……」
涙はひとつこぼれると、次から次へと溢れ出る。
止めようとしても止まらないその涙を、由岐先生は指先でそっと拭った。
「たまに、自分の選択が正しかったのかわからなくなるんです……」
「選択?」
「父親がいなくても頼を生む、ひとりで育てるって決めたのに……私、できないことばっかりで、頼も不安にさせて悲しませて」
きっと、体調不良からくる不安定な気持ち。
いつもは隠せている不安が、むき出しになってしまう。