クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「あの子には私しかいないのに……こんな私が頼の親でいいのかなって」
強くなるって決めたのに、私はいつまでたっても弱いまま。
子供のように泣きじゃくりながら、泣き顔を見られたくなくて両手で顔を隠す。
「そうやって自分を追い込むな。人ひとりを育てるんだ、迷ったり悩んだり、誰かに頼ることもある。そうやって自分だって育てられてきた」
由岐先生は顔を隠していた手をそっと外すと、大きな手でこの手を包んでくれる。
「だから、無理、しんどいって思うときは俺を頼れ。いつだってどんなときだって、俺は美浜と頼の味方でいるから。
だから強くなくていい。ひとりじゃない、大丈夫だ」
彼のその言葉は、あの日と同じあたたかさを持ちこの心を救ってくれる。
何回だって繰り返し、『大丈夫』と伝え続けて。
「それに、こんな私なんて言うなよ。頼にとっては美浜がこの世界でただひとりの母親なんだから」
「そう、ですけど……」
「今朝俺が駆け付けたとき、頼は美浜のそばから一切離れず泣いてたよ」
「え……?」
由岐先生の言葉は少し意外だった。
いつもの頼ならひとりでふらふら歩いて行ってしまうとばかり思っていたから。
「美浜の隣で服の裾しっかり握って泣いててさ。幼いなりに今ここで美浜から離れちゃいけないって思ったんだろうな」
突然母親が倒れて、不安にさせてしなったかもしれない。怖かったのかもしれない。
だけど逃げ出さず、ずっとそばにいてくれた。
そんな頼を思うと愛しくて、早く会って抱きしめたいと心から思う。