クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
*7
すっかり熱も下がり、体調も本調子に戻ったある日の夕方。
定時で仕事を終えた私は頼を迎えに行くべく、身支度を済ませロッカールームを出た。
体が軽い、健康って素晴らしい。
熱を出し倒れたあの日、私は由岐先生の家にお世話になった。
頼を連れて帰ってきた彼は、夕飯の支度から頼のお風呂、寝かしつけまでお世話を全てしてくれて……。
夜中に頼が『ママ』と泣いていたようだけれど、由岐先生があやしてくれていたようだった。
次の日には熱も下がったけれど、『大事を見て今日一日ゆっくりしてろ』とまた一日泊めてもらい、自宅へ戻ったのは二日後のことだった。
すっかりお世話になっちゃった。
それに、熱で弱っていたとはいえ子供みたいに泣いてしまって恥ずかしい。
けどそんな私のことも受け入れてくれるから、甘えてしまう。
「あ、ロッカーにハンカチ忘れた」
ふとバッグの中を見て気付くと、私は急いでロッカールームへ戻る。
そして部屋のドアに手をかけた、そのときだった。
「あーもう、由岐先生の噂が本当だったなんて超ショックー!」
聞こえてきた『由岐先生』の名前に、思わずドアを開ける手が止まる。
由岐先生の噂って……?