クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「あぁ、小児科の荻野って子だっけ?あの子と結婚するって噂、本当だったんだ」
って、私との噂のこと!?
続いて出てきた自分の名に、血の気が引いてしまう。
「看護師の中では『どうせただの噂』って信じてなかった子も多いんだけどさ、由岐先生と同じマンションに住んでるっていう先生が、由岐先生の家からあの子と子供が出てくるの見たんだって」
「あー、子供とも会わせてるってことは結婚意識してるってことだよねぇ」
そ、そんなことが……。
以前からの噂が、いっそう広がってしまったようだ。
でもここで私が出て行って否定するのもなんかなぁ。
どうするべきか、と頭を悩ませていると、彼女たちは話を続ける。
「でも正直もったいないよねぇ、由岐先生ほどの人がただのクラークで、しかも未婚のシングルマザーと付き合うなんてさ」
「だよね。医師でも看護師でももっと美人で優秀な人なんていくらでもいるのに、よりによってあの程度の子って。つりあわないって」
なんてことない気持ちで言っているにすぎないのだろう、彼女たちの言葉はこの胸の痛いところにぐさりと刺さる。
……そうだよね、周囲からはそう見られて当然。
私と彼は立場も大きく違う、ましてや私は未婚の母だ。
変な噂になって由岐先生の評価を下げちゃいけない。
やっぱり、距離を置くべきだ。
わかりきっていたことなのに、落ち込む気持ちを隠し切れない。
ロッカールームに入ることをやめ、私はそのまま保育所へ向かった。
落ち込む足取りは重く、けれど頼の前では元気でいなくては、と息をひとつ吸い込んで保育所のゲートをくぐる。
すると、保育所の敷地内にあるブランコには頼を膝に乗せブランコに揺られる由岐先生の姿があった。