クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「美浜、お疲れ」
「由岐先生……」
距離をおくべき、そうわかっていてもその目がこちらを向くだけで胸がときめく。
「まんまぁー!」
私を見つけた頼は彼の膝から下り、手にしていた折り紙を見せてくる。
それは保育士さんが作ってくれたのだろう、象の形の折り紙だ。
「ん?頼これどうしたの?」
「うー!」
なんだか興奮気味に象の折り紙をぶんぶんと振り回す頼に、意図が読めない私。
そんな状況に由岐先生が笑いながら口をひらく。
「俺が来たときからこうでさ、保育士に聞いたら今日象のDVDを見て以来この興奮っぷりだそうだ」
「あぁ、それで……」
そういえば普段本物の動物なんて見ないから、映像だけでもテンションが上がったんだろうなぁ。
納得していると、由岐先生は思いついたように言う。
「じゃあ頼、今度の日曜に本物の象さん見に行くか?」
「え?」
「日曜なら美浜も休みだろ?三人で動物園に行こう」
その誘いは嬉しいけれど、さっきの噂もあるし、距離を置かなくてはと思う。
でもはしゃぐ頼の顔を見ると断れず……なにより自分も本心では嬉しくて、うなずいた。
由岐先生とはつりあわない。だから、距離をおかなくちゃ。
そう思うのに、優しさを跳ね除けられない。